上手・下手はどっち?覚え方とバミリ・0番、ダンスの舞台用語

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「右に動いて」と言われたとき、それが誰から見た右なのかを決めていないと、チームの半分が逆へ動きます。舞台にはそのための共通の言葉があります。上手(かみて)と下手(しもて)、舞台前と舞台奥、センター、袖、そして床に貼るバミリと0番から数える番号です。この記事では、劇場技術者の用語解説やダンス教室の説明を確かめながら、ダンサーが最初に覚えたい舞台用語を一覧のように整理し、スタジオから本番の舞台まで立ち位置をそろえる手順を紹介します。

客席から見るか、舞台から見るか:上手と下手はどっち?

日本の劇場では、舞台の左右を「右」「左」ではなく、上手(かみて)と下手(しもて)で呼びます。一般社団法人日本劇場技術者連盟の用語解説によると、上手は客席から見て舞台の右側、下手は客席から見て左側です。基準はあくまで客席側にあります。新人俳優向けの用語集が書いているとおり、舞台に立って客席を向いた人から見ると左右が逆になり、上手が自分の左、下手が自分の右です。日本語版ウィキペディアも、客席と舞台では左右が逆になるため、右と左で区別するのは紛らわしいと説明しています。

呼び名の由来は、はっきりとは分かっていません。埼玉県の高校演劇連盟のサイトで公開されている演劇専門用語集は、昔の舞台が屋外で南向きに建てられ、客席から見て右が日の出る東にあたったからではないか、という説を「あまり自信はない」と断ったうえで紹介しています。演出家の神澤和明氏はブログで、人形浄瑠璃の太夫の床が上手にあるように、舞台では本来、上手のほうが重く扱われてきたようだと書いています。覚え方として知られているのは「ピアニッシモ」です。日本語版ウィキペディアによると、舞台でピアノを弾く側が下手なので、「ピアニッシモ」の「シモ」から「ピアノはしもて」と覚えます(同記事には出典不足の注意書きがついています)。

ほかの言語の資料を読むときは、基準の違いに気をつけてください。日本劇場技術者連盟の解説では、海外では舞台から客席を見た左右で呼ぶため、上手は stage left、下手は stage right です。ウィキペディアによると、フランス語では上手が côté cour、下手が côté jardin です。日本語とフランス語は客席から、英語は演者から見た名前なので、上手=stage left=côté cour、下手=stage right=côté jardin となります。スタジオで鏡を客席に見立てるときにも落とし穴があります。鏡の中の自分は、客席から見た姿とは左右が反対です。鏡に向かって立ったとき、上手は鏡に映った右側ではなく、自分の左手側です。

舞台のエリア:舞台前と舞台奥、センター、へそ、袖

奥行きの方向は、客席に近い側が舞台前、遠い側が舞台奥です。新人俳優向けの用語集は、現場では単に「前」「奥」と呼ぶこともあると書いています。日本劇場技術者連盟の解説は、舞台のいちばん前で客席との境目を舞台端(ぶたいばな)、英語の down stage とし、舞台の後部を舞台奥、英語の up stage としています。up と down は、昔のヨーロッパの劇場で舞台が奥ほど高い斜面になっていた名残です。日本でも、舞台全体を奥が高くなるよう斜めに組むことを「八百屋」と呼びます(埼玉の演劇専門用語集)。客席側の縁は「ツラ」とも呼ばれます。

日本の現場では、上手・センター・下手の横方向と、舞台前・舞台奥の奥行きを組み合わせて、「下手奥」「上手前」のように言います。神澤氏も能舞台の柱をこの言い方で説明しています。センターは舞台の横幅の中央で、上手と下手の境界線です(埼玉の用語集)。横と奥行きの中心線が交わる点は「へそ」と呼ばれ、十字のバミリで示されることがあります。舞台を区画に分けて考える方法もあり、神奈川県立図書館のレファレンス記録は、1964年の『演劇學』の論文が歌舞伎の舞台を上手・下手、舞台中央、舞台前・舞台奥といった場に分けて分析していること、東京創元社の『舞台文庫』に収められたルース・クラインの著作が舞台を6つのブロックに分けて演出を論じていることを紹介しています。ただし、区画ごとに決まった略号をつける体系は、今回読んだ日本語の用語集には見当たりませんでした。

舞台の左右にあって客席から見えない場所が袖(舞台袖)です。日本劇場技術者連盟は舞台袖を舞台両脇の奥の場所とし、「ふところ」とも呼ぶと説明しています。袖を客席から隠す袖幕は、埼玉の用語集によると手前から奥へ「1袖、2袖、3袖」と数えます。ダンサーは袖から舞台に出て(出)、袖へ退場します(ハケ)。幕が開いたときにすでに舞台上にいることは板付き(いたつき)と言います。袖で待つときは、客席から姿が見えてしまう「見切れ」に気をつけましょう。どの袖から出てどこへハケるかも、立ち位置と同じく最初に決めておきます。

エリアの重さ:どこに立つと目立つのか

演出家の神澤和明氏は、舞台中央は全体を支配する「重い」場所で、そこから離れるほど軽くなると説明しています。舞台前に出ると重くなり、舞台奥へ下がると軽くなります。立っている人は座ったりしゃがんだりした人より存在感が大きく、顔を正面に向けたときがいちばん強く、後ろを向くととても弱く見えるとも書いています。一方で同氏は、能舞台では約束事によって下手奥のシテ柱が上手前のワキ柱より重くなるという例も挙げています。重さは場所だけで決まるものではなく、構図の約束事として受け取るのが妥当です。

左右の意味については、資料によって見方が分かれます。神奈川県立図書館のレファレンス記録が引く熊倉千之『日本人の表現力と個性』によれば、江戸時代の観客の目は上手から下手へ動き、上手の主人公側に立って舞台を見ていたので、下手から誰かが入ってくると非日常のきっかけになったといいます。神澤氏は逆に、視線は左から右、つまり下手から上手へ動くのが自然だという自説を述べています。どちらも下手を入口として扱う点は同じですが、目の動きの説明は一致しません。どちらも法則ではありません。

グループの振付に当てはめるなら、まず見せ場や主役を舞台前のセンター付近に置き、ほかのダンサーで左右の重さをそろえます。2列以上になるときは、DECO DANCE SCHOOL の解説にあるように、1列目を番号の真上(オン番)、2列目を番号と番号の間(.5、てんご)に立たせると、前後が重ならず全員が見えます。センターを挟んで2人が対称に立つ「割り」も基本です。また、見え方は座る場所で変わります。客席の端に座る人には、同じ側の袖に近い舞台奥が額縁の陰に入りやすいので、端の席からも確かめてください。

0番と番号、バミリとバミリテープ

ダンスの舞台には、立ち位置の目安になる番号があります。ダンスイベントを運営する MUGIFELTY の解説によると、多くのダンスイベントや発表会では舞台のいちばん前(ツラ)に番号を置き、真ん中のセンターを0として、両側へ1、2、3…と数が大きくなります。つまり0番がセンターで、上手側と下手側にそれぞれ1番、2番と並びます。間隔について、ノアスタジオは90cmと決まっていて尺貫法の1間(約180cm)がもとだと書き、シアターワークショップも1間の半分に由来すると説明しています。一方、MUGIFELTY は一般的には90cmでも舞台の広さやイベントで違うこともあるとし、新人俳優向けの用語集は、センターが何番か、どちらから数えるかも現場で違うので最初に確かめるよう勧めています。1m間隔とする資料は、今回は見つかりませんでした。

床につける目印がバミリで、テープを貼ることを「バミる」と言います。日本劇場技術者連盟は、演技者の立つ位置などの目印として床にビニールテープなどを貼ることと説明しています。埼玉の用語集は、このテープを「バミテ」と呼び、語源は「場を見る」だと思う、と書いています。ダンススタジオ Rei の舞台用語の解説には「場ミリ」という書き方も出てきます。シアターワークショップの解説によると、人の立ち位置にはT字、一般的な目印には×、物の配置にはL字を使い、人の立ち位置はつま先の位置に貼ります。用途ごとに色や形を変え、横に誰の位置かを書いておくと見間違いが減ります。暗転中に位置を確かめたい場所には蓄光テープを使い、埼玉の用語集は開演前に小さなライトで照らしておくとよく光ると勧めています。

貼りすぎは禁物です。埼玉の用語集は、たくさん貼ると床が星空のようになるので、なるべく小さく必要最小限にし、平面図で誰がどこに貼るかを確認しておくよう書いています。蓄光テープも客席から見えるため、舞台監督やスタッフの指示に従って最小限にします(新人俳優向けの用語集)。テープは床を傷めずにはがしやすいものを選び、使ってよい種類を会場に前もって確認しましょう(シアターワークショップ)。同じ解説は、場面が多いとバミリが増えて見間違えやすいので、用途ごとに色や形を変えるよう勧めています。演目が変わるときも、前の作品のバミリを残さずはがしてから貼り直すと混乱しません。ダンス用の床材リノリウムを敷いた舞台では、継ぎ目の線(リノ線)も横列をそろえる目安になります(DECO DANCE SCHOOL)。

チームに舞台の位置を伝える

立ち位置を伝えるときは、毎回どちらの視点の言葉かを添えます。チームで呼び方を一つに決め、上手・下手を使うなら「右」「左」は使わないようにしましょう。英語の資料を使う場合も、stage left は演者から見た左、つまり上手だと最初に共有しておきます。番号を使うなら、センターを0番とするのか、上手と下手のどちらへ数えるのか、間隔は何cmかを最初にそろえます。新人俳優向けの用語集も、分からないときは「上手は客席から見て右で合っていますか」と具体的に確かめるよう勧めています。指示は「下手の2番、2列目」のように、番号と奥行きをセットで伝えると誤解が減ります。

ノアスタジオのように鏡の下に番号のバミリを貼ってあるスタジオでは、鏡の側が舞台前、つまり客席の側にあたります。鏡に向かって立つと上手は自分の左手側ですが、客席から見れば右側です。振りをまねるときの左右について、ダンススクール NAYUTAS の解説は、向かい合った先生の姿を鏡のように写す「鏡向き」と、先生が生徒と同じ方向を向く「背面向き」を区別しています。鏡向きでは見た目は同じ方向へ動いても先生が実際に使う体の左右とは逆になることがあり、背面向きなら左右が一致します。どちらでまねるかを決めてから始めましょう。舞台の番号をスタジオに再現するには、紐に90cm間隔で数字をつけておくと毎回測らずに済む、とノアスタジオは勧めています。

フォーメーションごとに、一人ひとりの位置を番号と列で書き留め、本人に渡しておきます。そのうえで本番の会場では、場当たり、つまり本番の舞台で立ち位置や動き、照明や音響を場面ごとに確かめる稽古で位置を合わせ直します。スタジオと舞台では距離感が違うため、DECO DANCE SCHOOL の解説は、ぶつかりそうなときに動き出しを少しずらす「盗む」という調整を紹介しています。確認は舞台の上だけでは足りません。埼玉の用語集が紹介するガナリマイクのように、演出側は客席から舞台に指示を出します。誰か一人が客席に座り、センターと端の席から見え方を確かめましょう。

Stancz で舞台の立ち位置を準備する

Stancz は、実寸の舞台にダンサーを配置してフォーメーションをつなげ、移動を音楽に合わせてアニメーションで確認できる振付アプリです。真上から見る 2Dビュー、3Dビュー、客席から見る観客ビューがあります。パソコン(PC または Mac)のブラウザでインストールなしに使え、iPhone、iPad、Android のアプリもあり、どれも同じアカウントで使えます。無料では振付を 3 つまで、1 つの振付につきフォーメーションを 4 つまで作れます(有料プランもあります)。人数に合わせて形が整う 19 種類のプリセットフォーメーションがあり、1 つの振付に最大 500 人のダンサーを置けます。

舞台の幅と奥行きはメートルで設定でき、初期値は 10 × 6 m(表示は「ステージ · 10.00×6.00 m」)です。2Dビューの上と左には定規があり、1 m ごとに数字、50 cm ごとに目盛りが入ります。縦横の破線の中心線は常に表示され、中央の小さな十字で交わります。これがセンターとへそです。手前の縁の下に「舞台前」、奥の縁の上に「舞台奥」とあり、客席は図の下側です。上手・下手の文字はないので、図の右側を客席から見た右、つまり上手(stage left、côté cour)、左側を下手と読みます。定規の 0 は左上、舞台奥の下手側の角です。0番・1番といった番号は描かれず、定規も 1 m 刻みなので、90 cm 間隔の番号はセンターの破線から数えます。グリッドの表示、ダンサーをグリッドに吸い付けるスナップ、ダンサーの番号の表示も切り替えられます。

観客ビューでは、「席を選ぶ」から 1階中央、最前列、最前列・右側、左側、右側、審査員席、バルコニー、カメラの席を選ぶか、左右が示された座席表で座席をタップします。カメラがその席へ移ってチームを画面に収め、誰が誰の後ろに隠れているか、あるいは「この席から全員が見えます。」と表示します。「右側」の席は客席から見て右、つまり上手寄りの席です。3Dビューで舞台を立体的に確かめることもできます。振付を閲覧用に共有するのは無料で、ダンサーは「自分をハイライト」で自分のダンサーを目立たせられます(編集できる権限を渡すのは有料です)。一方で、PDF の書き出しや複数人での同時編集はできず、ダンススクールの管理機能もありません。

よくある質問

上手と下手、どっちが右ですか?覚え方はありますか?
客席から見て右が上手(かみて)、左が下手(しもて)です。舞台に立って客席を向くと逆になり、上手は自分の左手側になります。よく知られた覚え方は「ピアニッシモ」で、日本語版ウィキペディアによると舞台でピアノを弾く側が下手なので、「ピアノはしもて」と覚えます。呼び名の由来には南向きの舞台と東西の方角に結びつける説などがありますが、確かなことは分かっていません。迷ったら、客席側か演者側か、どちらの視点の話かを必ず確かめてください。
バミリとは何ですか?バミリテープは何を使えばいいですか?
バミリは、立ち位置や道具の位置を示すために床につける目印で、テープを貼ることを「バミる」と言います。劇場の用語解説ではビニールテープなどを貼るとされ、会場設営の解説は、床を傷めずにはがしやすいテープを選び、人の立ち位置にはT字、一般的な目印には×を使うよう勧めています。ダンサーや用途ごとに色を分け、暗転中に見たい場所には蓄光テープを使います。使ってよいテープは会場に確認し、貼るのは必要最小限にしましょう。
舞台の0番とは?番号の間隔は何cmですか?
0番は舞台のセンター、つまり横幅の真ん中です。そこから上手側と下手側へ1番、2番…と番号が振られ、ダンスイベントや発表会ではこの番号を舞台のいちばん前(ツラ)に並べるのが一般的です。間隔は90cmとする解説が多く、尺貫法の1間(約180cm)の半分に由来すると説明されています。ただし舞台の広さやイベントで違うこともあり、センターを何番とするかも現場によるので、本番の会場で確かめてください。
上手・下手は英語の stage left / stage right やフランス語ではどう言いますか?
上手は stage left、下手は stage right です。英語は舞台に立って客席を向いた演者から見た左右で呼ぶため、日本語の客席から見た呼び方とは「左」「右」の言葉が逆になります。フランス語では上手が côté cour、下手が côté jardin で、こちらは日本語と同じく客席から見た右と左にあたります。奥行きは、舞台奥が up stage、舞台の最前部が down stage です。
ダンサーの立ち位置を決められる無料のアプリはありますか?
選択肢の一つに Stancz があります。実寸の舞台にダンサーを配置し、フォーメーションをつなげて、移動を音楽に合わせて確認できる振付アプリです。パソコンのブラウザ(インストール不要)と iPhone、iPad、Android のアプリで使えます。無料では振付 3 つまで、1 つの振付につきフォーメーション 4 つまで作れ、有料プランもあります。2Dビュー、3Dビュー、観客ビューがあり、選んだ席から誰が隠れているかを確かめられます。PDF の書き出しや複数人での同時編集はできません。

出典

このガイドは、執筆時に確認した次の資料にもとづいています。

  1. 1.teec-or.org
  2. 2.ja.wikipedia.org
  3. 3.saikoenren.com
  4. 4.crd.ndl.go.jp
  5. 5.plaza.rakuten.co.jp
  6. 6.mugifelty.com
  7. 7.noahstudio.jp
  8. 8.kaijosagashi.theatre-workshop.co.jp
  9. 9.dance.deco-music.jp
  10. 10.note.com
  11. 11.dance.nayutas.net
  12. 12.rei-dance.com

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